中国向けサイトのサーバー選び|中国国内・香港・海外CDNの違いと、中国からの表示速度の測り方

中国向けの中国語サイトを作るとき、「日本の本社サイトと同じサーバーに置けばよい」と考えていないでしょうか。日本からは快適に表示されるサイトでも、中国本土から開くと表示に何秒もかかる、時間帯によってつながらない、ということは珍しくありません。

表示が遅いサイトは、訪問者が待たずに離れてしまうだけでなく、百度のクローラーがページを取得しにくくなり、収録や順位にも影響しうるとされています。この記事では、中国向けサイトのサーバーの選択肢と、それぞれの向き・不向き、中国本土からの表示速度の測り方を解説します。

なぜ中国向けサイトはサーバーの場所が重要なのか

中国本土と海外の間の通信は遅くなりやすい

中国本土と海外の間の通信は、国際回線の経路や混雑の影響を受けやすく、海外のサーバーに中国本土からアクセスすると、応答が遅くなったり不安定になったりすることがあります。中国のクラウド代理店による解説では、海外から中国本土のサーバーへの遅延は200ミリ秒を超えることがあるとしています。夜間など利用が集中する時間帯に、通信の損失が増えるという指摘もあります。

日本と中国は地理的には近いものの、日本のサーバーだから速いとは限りません。実際の速さは、サーバー会社がどの回線で中国とつながっているかに左右されます。

百度は表示速度を評価に使うと公表してきた

百度は、モバイル検索の表示速度を評価に使う方針を打ち出してきました。2017年に発表された「闪电算法(閃電アルゴリズム)」について、中国の解説記事では、モバイルページのトップページが2秒以内に表示されるサイトは優遇され、3秒を超えるサイトは評価が下がりうると紹介されています。アルゴリズムの細かな内容は公表されていない部分も多いものの、表示速度が百度SEOでも無視できない要素であることは押さえておきましょう。

クローラーが取得に失敗すると、収録が進まない

百度のクローラー(Baiduspider)からページを取得できないと、そもそも収録されず、検索結果に表示されません。日本から確認すると問題なく表示されるのに、百度からは応答が遅い、またはタイムアウトしている、というケースもあります。百度搜索资源平台の「抓取诊断」で取得の可否を確認する方法は「百度搜索资源平台の登録方法と使い方」で解説しています。

サーバーの選択肢は大きく4つ

中国向けサイトのサーバーは、主に次の4つから選ぶことになります。

選択肢 ICP備案 中国本土からの速度 主な注意点
中国国内のサーバー 必要 最も有利 備案の取得に中国国内の法人などの条件がある
香港のサーバー 不要 回線しだいで比較的良好 中国本土向けの回線かどうかで差が大きい
日本など海外のサーバー 不要 不利になりやすい 時間帯によって遅く、不安定になりやすい
CDN 中国本土のノードを使うなら必要 構成しだい 備案がないと中国本土のノードは使えない

以下、それぞれの特徴を見ていきます。

1. 中国国内のサーバー(ICP備案あり)

中国本土のユーザーに最も速く、安定して表示できるのが中国国内のサーバーです。阿里云(Alibaba Cloud)、腾讯云(Tencent Cloud)、华为云(Huawei Cloud)などのクラウドや、中国のレンタルサーバーがこれにあたります。

ただし、中国本土のサーバーでWebサイトを公開するには、原則として ICP備案が必要です。申請は中国国内の法人や個人が主体となるため、日本法人がそのまま取得できるわけではなく、中国の現地法人の名義で申請するケースが多く見られます。先ほどのクラウド代理店による解説では、備案の完了までに約20営業日かかり、その間はサイトを公開できないとしています。

中国に現地法人があり、中国のユーザーが主な顧客であれば、最初に検討したい選択肢です。制度の概要は「ICP備案の確認方法」を参考にしてください。

2. 香港のサーバー

香港は中国本土とは別の制度で運用されているため、香港のサーバーではICP備案が不要です。中国本土に地理的に近く、備案を取得できない企業がよく選ぶ選択肢です。

ただし、香港のサーバーならどこでも速いわけではありません。中国本土向けに最適化された回線(中国電信の「CN2」と呼ばれる回線など)を使っているかどうかで、速さに大きな差が出るとされています。前述の解説では、中国本土向けの回線を使う香港のサーバーは中国本土からの遅延が小さい一方、そうでない回線では夜間のピーク時に通信の損失が増えるため、中国本土向けには向かないとしています。中国本土向けに最適化された回線は、通常の国際回線より料金が高めになる傾向があります。

香港のサーバーを選ぶときは、価格だけで決めず、中国本土向けの回線かどうかをサーバー会社に確認しましょう。

3. 日本など海外のサーバー

日本の本社サイトと同じサーバーや、日本・米国のクラウドに中国語サイトを置く方法です。追加の契約が不要で手軽ですが、中国本土からの表示速度と安定性の面では最も不利になりやすい選択肢です。

日本のサーバーを使い続ける場合は、少なくとも後述の方法で中国本土からの表示速度を測り、許容できる範囲かどうかを確かめておきましょう。測ってみて遅い場合は、香港への移転や、後述のCDNの利用を検討します。

4. CDN(コンテンツ配信ネットワーク)

CDNは、サイトの画像や HTML の写しを各地の配信拠点(ノード)に置き、ユーザーの近くから配信する仕組みです。サーバー本体の場所を変えずに表示を速くできる手段として知られています。

ただし、中国本土にあるノードから配信するには、原則としてICP備案が必要です。たとえば阿里云のCDNでは、配信地域として「中国内地のみ」「全世界」「全世界(中国内地を除く)」を選べます。公式ドキュメントによると、中国本土のノードを含む前の2つはICP備案が必要で、備案のいらない「全世界(中国内地を除く)」を選ぶと、中国本土のユーザーには日本・シンガポール・香港のノードから配信されます。Cloudflare の中国本土向けサービス(China Network)も、ICP備案があることが利用の条件とされています。

つまり、備案がない場合のCDNは中国本土の外のノードから配信することになり、効果は限られます。それでも、日本の遠いサーバーから直接配信するよりは改善が期待できるため、まずは測定して比べてみる価値はあります。

自社に合った構成の選び方

ICP備案を取れるかどうかで、現実的な構成は大きく変わります。

ICP備案を取得できる場合

  • 中国国内のサーバーに中国語サイトを置く
  • 画像などの配信が多い場合は、中国本土のノードを使うCDNを組み合わせる
  • 日本語サイトや英語サイトは、これまでどおり日本など海外のサーバーに置き、中国語サイトだけを分けて運用する

ICP備案を取得できない、またはまだ取得していない場合

  • 中国本土向けの回線を使う香港のサーバーに中国語サイトを置く
  • 日本のサーバーを使い続ける場合は、中国本土の外のノードから配信するCDNを試し、速度を比べる
  • 中国での事業が拡大し、現地法人で備案を取得できるようになった段階で、中国国内のサーバーへの移転を検討する

サーバーを移転するときは、URLを変えないのが原則です。やむを得ず URL を変える場合は301リダイレクトを設定し、百度搜索资源平台の「站点改版」で新旧のURLの対応を届け出ておきましょう。

中国本土からの表示速度を測る方法

構成を決める前にも、決めた後にも、中国本土から実際にどのくらいの速さで表示されるかを測ることが大切です。日本からの表示速度は、中国のユーザーの体験とはまったく別物だと考えてください。

中国の速度測定サービスを使う

中国には、国内各地の測定拠点からサイトにアクセスし、地域別・回線事業者(中国電信・中国聯通・中国移動など)別に応答時間を一覧できる無料のサービスがあります。

  • 17CE(17ce.com): 2011年から提供されている中国のWebサイト速度測定サービスで、地域別・回線事業者別の分析ができます
  • ITDOG(itdog.cn): 中国各地からの ping や Webサイトの速度測定ができるサービスとして知られています

結果を見るときは、全体の平均だけでなく、地域や回線事業者によって極端に遅い、またはエラーになっている拠点がないかを確認します。1回だけでなく、日中と夜間など時間帯を変えて何度か測ると、混雑する時間帯の傾向も見えてきます。

百度搜索资源平台で百度からの取得を確認する

訪問者からの速度とは別に、百度のクローラーから正常に取得できているかも確認しておきましょう。百度搜索资源平台の「抓取诊断」では、百度がページを取得した結果を確認できます。失敗が続いている場合は、サーバーの場所やアクセス制限の設定を見直す必要があります。

海外の外部リソースが遅さの原因になっていないか

サーバーが速くても、ページ内で読み込んでいる海外の外部リソースが表示を遅らせることがあります。代表的なものは、Google Fonts などの海外のWebフォント、海外のCDNから読み込む JavaScript ライブラリ、海外の解析タグや地図、動画の埋め込みです。中国本土で読み込めない、または読み込みに時間がかかるリソースがあると、ページ全体の表示が止まってしまうことがあります。速度測定でサーバーの応答は速いのに表示が遅い場合は、外部リソースを疑ってみましょう。

まとめ

  • 中国本土と海外の間の通信は遅く、不安定になりやすく、日本のサーバーだから速いとは限らない
  • 百度は表示速度を評価に使う方針を示してきた。クローラーが取得に失敗すると収録も進まない
  • 中国本土からの速度で最も有利なのは中国国内のサーバーだが、ICP備案が必要
  • 備案がない場合は、中国本土向けの回線を使う香港のサーバーが現実的な選択肢
  • 中国本土のノードを使うCDNにも備案が必要。備案なしのCDNは中国本土の外からの配信になる
  • 構成を決める前後に、17CE や ITDOG などで中国本土からの速度を、時間帯を変えて測る
  • サーバーが速くても、海外のフォントやスクリプトが表示を遅らせていないかを確認する

収録状況の確認方法は「百度の収録(インデックス)確認方法」、百度SEO全体の進め方は「百度SEOの基本」にまとめています。

SEOChinaでできること

SEOChina は、日本語で使える百度の順位チェックツールです。サーバーの移転や CDN の導入の前後で、狙っているキーワードの順位がどう変わったかを記録できます。

  • 登録したドメインとキーワードについて、百度PCの順位を毎日記録し、推移を表で確認できます
  • 順位は50位まで取得し、ランクインしたURLも確認できます
  • ICP備案・Whois・百度収録数の単発調査にも対応しています

Free プランは無料で、1ドメイン・日次順位監視10枠(履歴30日保存)から始められます。移転の前から順位を記録しておくと、変化を比べやすくなります。登録はこちらから行えます。

参考

ブログ一覧へ戻る