越境ECの中国向け集客|百度SEOとSNS・モールの使い分けを公的データから考える

中国の消費者に日本の商品を売る越境ECでは、「モールに出店すればよいのか」「SNSに力を入れるべきか」「百度のSEOは必要なのか」と、集客の手段の選び方で迷うことがよくあります。どれか一つで足りるわけではなく、それぞれが受け持つ役割が違うからです。

この記事では、まず公的な統計と越境ECの制度で前提を確認し、そのうえでモール・SNS・百度SEOの役割の違いと、百度SEOがとくに効く場面、最初に取り組むことを整理します。

前提1:中国の消費者は日本から年2.6兆円を越境ECで買っている

経済産業省の「令和6年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」によると、2024年に中国の消費者が日本の事業者から越境ECで購入した額は2兆6,372億円でした。同じ調査で、米国の事業者からの購入額は3兆1,397億円とされています。日本は、中国の消費者にとって大きな購入先の一つです。

中国の公的機関である中国互联网络信息中心(CNNIC)の第57次統計報告では、2025年12月時点でネットショッピングの利用者は9.37億人、インターネット利用者の83.2%にあたります。検索エンジンの利用者は7.82億人(同69.5%)、ショート動画の利用者は10.74億人(同95.4%)です。人数だけを比べると、検索よりもショート動画の利用者のほうが多い状況です。検索エンジンの利用状況は「中国の検索エンジンのシェア」で詳しく解説しています。

前提2:越境ECには独自の制度がある

中国の越境EC(越境電子商取引の小売輸入)は、一般の輸入とは別の制度で運用されています。集客の前に、売り方の枠組みを確認しておきましょう。

ジェトロの「中国向け農林水産物・食品の越境ECに関する制度調査」(2025年3月)では、主な方式として次の2つが説明されています。

方式 税関の監督方法コード 流れ
直送モデル 9610 商品は中国の国外で保管し、注文を受けてから国際輸送して通関する
保税区モデル 1210 商品を税金を留保したまま保税区などに置き、注文を受けてから通関して出荷する

税金の優遇には上限があります。財政部・海関総署・税務総局の通知(財関税〔2018〕49号、2019年1月1日施行)で、1回の取引の上限は5,000元、1人あたりの年間の上限は26,000元とされています。上限内の取引は、関税が0%、増値税と消費税が一般貿易の法定額の70%になると、前述のジェトロの資料で説明されています。

また、越境ECで輸入できる商品は「跨境电子商务零售进口商品清单」(いわゆるポジティブリスト)で決められています。直近の改定は2022年3月1日の施行で、ジェトロの資料によると2025年2月時点の掲載数は1,476品目です。自社の商品がリストに入っているかは、集客の計画より先に確かめておきます。

集客の手段は4つに分けて考える

越境ECの集客手段は、大きく次の4つに分けられます。

手段 主な例 得意なこと 弱いところ
越境ECモール 天猫国際、京東国際など 購入の手続きと決済がその場で完結する モールの中の検索や広告は、モールの外に出ない
口コミ・コンテンツのSNS 小紅書(RED) 使った人の感想から、商品を知ってもらう 投稿は時間とともに埋もれやすい
ショート動画・ライブコマース 抖音(Douyin) 多くの人に一気に届き、その場で買ってもらう 配信や広告を止めると露出も止まりやすい
検索エンジン 百度 名前を知った人が、自分から調べに来る 上位表示まで時間がかかる

小紅書は検索の場としても使われています。経済ニュースサイトの界面新闻は、2023年のWILL商業大会で公表されたデータとして、毎日のように検索する利用者が60%、1日の検索数が約3億回だと伝えています。中国の消費者は「何かを調べるときに百度だけを使う」わけではないことは、前提として押さえておきましょう。

モールとSNSは「出会う場所」、百度は「確かめる場所」

4つの手段は、購入までの流れの中で受け持つ場面が違います。SNSやショート動画で商品を知り、モールで買う、という流れは分かりやすいものです。その間に入りやすいのが、「このブランドは本当に日本の会社なのか」「正規品はどこで買えるのか」を確かめる行動です。

この「確かめる」場面で、ブランド名や会社名を百度で検索する人がいると考えられます。そのとき検索結果に公式サイトが出てこない、あるいは中国語のページがない、という状態では、信頼を得にくくなります。百度の検索結果で目立つ百度百科などのページの整え方は「百度百科・百度知道・百家号の使い方」で解説しています。

つまり、越境ECの集客で百度SEOに期待する役割は、「新しいお客さんを大量に連れてくること」よりも、「SNSやモールで知った人が調べに来たときに、公式の情報で受け止めること」が中心になります。

百度SEOがとくに効く3つの場面

1. ブランド名・商品名で検索されるとき

もっとも優先したいのが、ブランド名や商品名での検索(指名検索)です。たとえば次のような組み合わせが考えられます。

  • 「ブランド名 + 官网(公式サイト)」
  • 「ブランド名 + 正品(正規品)」
  • 「商品名 + 怎么样(どうですか)」

こうした言葉で自社の公式サイトや正規の販売ページが上位に出ていれば、偽物や転売品のページに流れるのを防ぎやすくなります。

2. 会社どうしの取引(B2B)や、高額な商品

業務用の商品や部品、製造装置など、会社が購入を決める商材では、SNSよりも検索で比べて調べる場面が多いと考えられます。製品の仕様や導入事例、問い合わせ先を中国語のページで用意しておくことが、そのまま集客につながります。

3. 自社サイトから問い合わせや購入を受けたいとき

モールへの出店だけでなく、自社サイトで問い合わせを受けたい場合は、検索からの流入が欠かせません。モールの中の評価やレビューは、モールの外の検索結果には直接は出てこないためです。

販売の段階ごとの使い分け

どこに力を入れるかは、販売の段階で変わります。

段階 主な手段 百度SEOでやること
テスト販売 モール(または代理購入)+小紅書の投稿 ブランド名で検索したときに、公式の情報が出るか確認する
本格展開 モール+SNS広告+ライブコマース 指名検索のキーワードで公式サイトの順位を毎日記録する
B2B・自社サイトでの受注 百度SEO+展示会や業界メディア 製品名・用途名のキーワードで、上位表示を目指す

テスト販売の段階では、百度SEOに大きな予算をかける必要はありません。ただ、ブランド名で検索されたときに何も出てこない状態だけは避けたいところです。

百度SEOで最初にやること

越境ECの事業者が百度SEOを始めるときは、次の順で進めると無駄が少なくなります。

  1. 簡体字の公式ページを用意する:機械翻訳のままにせず、中国の読み手に合わせた表現にします。作り方は「簡体字サイトの作り方」で解説しています
  2. サーバーとICP備案を確認する:中国本土のサーバーを使うなら、原則としてICP備案が必要です(「ICP備案の確認方法」)
  3. 指名検索のキーワードを登録する:ブランド名・商品名・「官网」「正品」などの組み合わせを決め、順位を記録し始めます
  4. SNSやモールの施策と順位を見比べる:SNSで話題になった時期に、指名検索での順位や表示されるページが変わったかを確かめます

注意しておきたいこと

  • モールの中の検索は百度に出ない:天猫国際などで上位に出ていても、百度の検索結果とは別物です。両方を別々に確認する必要があります
  • 統計の数字は定義を確認する:経済産業省の越境ECの金額は推計値で、CNNICの利用者数とは集計方法が違います。同じ表に並べて単純に比べないようにしましょう
  • 制度は改定される:取引の上限やポジティブリストは見直しが続いています。販売を始める前に、最新の公告を確認してください

まとめ

  • 中国の消費者が日本から越境ECで買う額は、2024年で2兆6,372億円(経済産業省)
  • 越境ECには直送モデル(9610)と保税区モデル(1210)があり、1回5,000元・年間26,000元の上限がある
  • モールとSNSは商品と出会う場所、百度はブランドを確かめる場所として役割を分けて考える
  • 百度SEOは、指名検索・B2B・自社サイトでの受注で特に効く
  • まず簡体字の公式ページを用意し、指名検索の順位を記録するところから始める

SEOChinaでできること

SEOChina は、日本語で使える百度の順位チェックツールです。越境ECの施策を進めながら、ブランド名や商品名で検索したときの公式サイトの順位を毎日の記録で確かめられます。

  • 登録したドメインとキーワードについて、百度PCの順位を毎日自動で記録します
  • 順位は50位まで取得し、ランクインしたURLも記録します
  • SNSのキャンペーンの前後など、期間を指定して順位の推移を表やグラフで比べられます(有料プランは期間の制限なく保存します)

Free プランは無料で、1ドメイン・日次順位監視10枠(履歴30日保存)から始められます。登録はこちらから行えます。

参考

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